令和7年1月から静岡県富士山世界遺産センターの館長に就任いたしました。このセンターは、芸術の源泉・信仰の対象という富士山について深く研究し、富士山の魅力を国内外に伝え、その文化的価値を永く守り続けていくための施設として、平成29年12月に開館いたしました。開館から7年間、遠山前館長が守り活動してきたその遺産と思いを受け継ぎ、世界の宝である富士山の価値を守り、後世に伝えていきたいと思っております。
私は日本が世界遺産条約に加盟した平成4年から世界遺産の仕事をしてきました。私を含む世界遺産にかかわる各国の専門家が、大事だと思ってきたことがあります。それは自然と生きてきた人の歴史のさまざまな姿です。富士山はそれを象徴するもっとも代表的な世界遺産と考えられています。何物にも邪魔されず一気にそびえたつ富士山の特徴ある姿は、それを見るすべての人の心に強く働きかける力を持っています。人が自然の大きな存在を前に驚き、畏れ、感動する。それが信仰する心を育て、世界に知られる日本の素晴らしい芸術を生んできました。
富士山がどれほど広く日本人の文化に影響を与えてきたか、登るだけ、眺めるだけではわからないこともたくさんあるかと思います。どうぞ、富士山世界遺産センターにお越しいただき、富士山について学び、様々な事を感じていただければと思います。
これからもよろしくお願いいたします。
静岡県富士山世界遺産センター館長 稲葉 信子